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美しい人/9 lives


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ロドリゴ・ガルシア監督の「美しい人」という映画はとても良い。
製作総指揮はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
(相変わらずめんどくさい名前)で、6,7年前に話題になった
「バベル」の監督の人。
ガルシア監督は、あのガルシア・マルケスの息子らしい。
(マルケスじゃないんだってツッコミたいよね)

「美しい人」の原題は「9 lives」で、
言葉通り、9人の女性の人生について描かれる。
オムニバス形式だけれど、どこかでつながっていたりする。




ロドリゴ・ガルシアは、私は天才だと思う。
監督のセクシャリティは知らないし関係ないけど、
女性というものをここまで分かっているというのは
怖いくらいに凄い。

彼女を見ればわかること」ていう映画もガルシア監督で、
それはもう、信じられないような映画だった。
派手さは無く、淡々とした映像だけど、心の中は嵐だった。





「美しい人」はオムニバス形式。
そのなかで特にぐっときた話について。
(ここから完全にネタバレで書くので、
未見の人はご注意を。)




1. 刑務所に服役するサンドラ

メキシコ系移民であろうサンドラは、
模範囚を目指すため、自分を押し殺して、
日々所内の仕事に励む。
淡々とした人だけど、たまにある愛する娘との
面会では、どうしても興奮して取り乱す。
その日の面会では電話が故障していて声が届かない。
ガラス越しに娘に向かって泣き叫ぶ。
看守たちに取り押さえられ、一度冷静になるものの、
再び暴れて連行されてしまう。そこで終わる。

一話目から壮絶な母性見せられて、
これは先が(良い意味で)思いやられると思ったわけです。
この人の演技が本当に上手くて、、感服



2. 昔の恋人と再会するダイアナ

過去にめっちゃ、めっちゃ色々あった
ダイアナとダミアンのスーパーでの偶然の再会で
別れてから築き上げてきたものが崩れそうになる。
もういい年だし、守るべきものも沢山あるから、
取り繕い、あきらめる。
けれど最後のダイアナのどうしようもない焦った泣き顔と、
立ち尽くす姿は、、、もう、、辛いね。

これは少し教訓というか、勉強になったところがある。
ダイアナとダミアンはもう40あたりで、
お互い結婚してるしダイアナは妊娠してるし、
多分キャリアもある。ここで全てを捨てて昔の恋人と
よりを戻すことはなかなか難しい。

私も最近色々あって、結構本当に色々あって、
大きな決断を迫られたり、
いろんなもの失ったりした。
これ以上辛い思いをするのは嫌だし、
これ以上失ったら何もかも無くなってしまう。
けど、「全てを失った」というには、
24歳の私はまだ若いことに気がついた。

結婚もしていないし、子供もいない。
恋人すらいない。キャリアだってたかが知れている。
だから、まだギリギリ無茶できる年齢なのかもしれない。
と思ってしまった。
ああ、どうしようかなあ。
一歩踏み出してしまおうか、迷う。



7.不倫に走るルース

ルースは5話のサマンサの母親。
夫婦仲はそこで描かれるようにイマイチ。
ときめきなんてもうきっと何十年も感じていない。
そしてある男と不倫しかける。
迷いがありつつもホテルの部屋に入るけど、
他の部屋の誰か(1話のサンドラ)が逮捕されているのを
偶然見て娘に電話して思いとどまる。

この話は不倫相手役の俳優が上手いと思った。
その男の分かってなさ、、もう何も分かってないのねこいつ。
いや本当分かってない。その分かってない男の演技がちょう上手い。
なんて分かってるんだこの俳優は、、



8.手術前のカミール

これはベタだと思ったけどボロボロ泣いてしまった。
ああーいいなあ、こういうのに一番憧れるのよ。

カミールは乳がんで、今まさに手術を受ける直前で、
かなりナーバスになっている。
付き添う夫をわけもなくなじって、
病院や看護士の愚痴をぶつける。

そんなカミールに対して、夫は慰めるでもなく
怒るでもなく、ただただぼーっと聞いている。
本当によくいるぼけーっとしたお父さん。
イライラした妻とぼけーっとした夫って、
よくある構図だよね、日本でも。

そんで鎮静剤(麻酔?)を打って少しずつ落ち着いて、
やがて意識を失った後、夫がキスをして、
「僕たちは永遠に一緒だよ」って言うの。

普段きっとろくな愛情表現もせず、
ただ家にいるだけの夫だけど、
実はこんなに妻を愛しているということが分かる。



9.最終話 マギー

初老のマギーは娘とお墓参りに来る。
無邪気に娘とじゃれ合って、
お天気が良くて、マギーは綺麗、娘はカワイイ。

だけどやけに年の離れた親子だなあと思っていたけど、
娘は本当は亡くなっているのね。小さい時に。
その娘のお墓参りに来ている。
娘と一緒にいるのはマギーの空想の世界。
楽しそうにしていたマギーが急に泣き出すシーンが辛い。

娘が亡くなって何十年も経って、
マギーは元気を出して気丈に生きているけど、
それでも今でも深い悲しみがある。

なんとも、最終話にふさわしい美しい話。

最後、マギーがひとり、お墓から歩いて去るシーンで終わるのだけど、
映像が消えた後にも足音が続けてきこえる。
これはすごく希望に満ちた暗示に思える。
何が起こっても人生は続く。生きていかなきゃならない。
という暗示に思える。







nine-lives-20060126054021843-000.jpg



ある程度の年数を生きていれば、性別や人種に関わらず、
色々なことがありますよね。
良いことも悪いことも、良いとか悪いとか断定できないことも。
いくつになっても生きることって難しくて、
何をしても器用にこなせない。
けど、それでもいいやって思う、この映画見ると。
この映画に出てくる人たちは、誰一人器用でなく、
未熟で、弱いけど、そこが人間らしくて素敵だよ。
人が生きていくなかで抱え込んでいく、
悲しみや傷は、その人をセクシーに見せると思うなあ。
人が持つ色気の正体は、
その人のマイナス面から出てくるものだよきっと。
過去の悲しみも傷も愛そうと思えるよ。








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Coco Iijima

Author:Coco Iijima
ヒップホップ・アクティヴィスト
1990年 東京生まれ

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